「いつも二人で」

2025年11月18日

私はオードリー • ヘップバーンが大好きだ。
彼女の映画「いつも二人で」でカフェで黙って座っている二人の年配の男女に対して、「あんな風に一言も交わさずに座っているのは誰だと思う?」という夫からの質問に「married people (夫婦)」とオードリーが答えるシーンがある。
確かに私の両親も、黙ってこたつに座っているのを確認した3時間後に戻って見ても同じ姿勢で黙って座っていた。これが「夫婦」なのだと納得した。

その患者さんはいつも遠く土浦から柏まで来院されていた。御主人はデイサービスに行かれており、歩くのが御不自由で介護されていると仰っていた。
守谷に移転し、初めて御主人も一緒にみえられた。
膝と腰の痛みがあるという。
歩行状態と他の神経症状から正常圧水頭症を疑った。
転びやすい、歩きにくい、トイレが近い、最近物忘れがある、という症状がみられたら年のせいではなく、正常圧水頭症である事が往々にしてある。
正常圧水頭症は治る病気である。
私はすぐに我孫子聖仁会病院の高木先生を御紹介した。素晴らしい先生で、今まで何十人にも及ぶ患者さんを御紹介させて頂き、助けてくださっている先生だ。私はいつも日本で5本の指に入る先生だよ、と話す。

術後一ヶ月して来院された。
介助なく、ニコニコと笑いながらスムーズに診察室に入ってこられ、診察ベッドにも一人で寝て、起きる事ができた。
目覚ましい改善に奥様は感激され、デイサービスのスタッフも驚いているという。
余りの改善ぶりに、杖を忘れて帰られたので、そう遠くはないので困っていらっしゃるだろうと思い届けに伺った。

大きな傘をさしながら、迎えに来てくださった奥様は何度も感謝の言葉を言ってくださり、その表情には心からの安堵と幸せが溢れていた。
夫婦お二人の生活で、きっといつもお二人で何時間もこたつに黙って座ってるだろうなと思う。

「愛」に勝る治療法はないと私は思う。
どんな薬も治療も、共に悩み、喜び支える愛があってこそ何倍もの威力を発揮すると私は確信している。

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一歩一歩の奇跡 — 柏から届いた希望の足音